ホル韓的に2015年12月1日に迫っていた戦時統制権の返還再延期を考察すると、表面上はこれにつきます。
戦時統制権の返還で「在韓米軍の撤退⇒韓国の安保に米国は関与しない」という間違った政治的メッセージを与え地域の安定を崩す恐れがあるため。これについては米韓両国が共通して懸念している点です。
韓国側が再延期した理由は・・・
では、韓国側が戦時統制権の返還時期を再延期した理由は、表向き「韓国型ミサイル防衛システム(KAMD)」の構築に時間がかかるためだと言われています。では「韓国型ミサイル防衛システム(KAMD)」とは何なのか?
これは米国主導のMD計画に参加すれば、中国の機嫌を損ねるため、韓国独自の論理「ミサイル下層防衛だけなら中国の核戦略の脅威にはならない=中国も文句は言ってこないだろう」という考えの元、ミサイルの発射予知(いわゆる発射準備状態)を素早く検出する体制を整え、脅威判定を素早く行い、先制攻撃をするかどうかの決断を下し、巡航ミサイルや航空戦力でミサイルの発射を阻止するか、最悪発射された場合には、高度40km以下に限定したミサイル迎撃を行なうというもの。
これが計画の大枠であり、このシステムを国産開発するはずでしたが、既に計画はグチャグチャです。まず「天弓」という迎撃ミサイルがロシアからS-400の技術を移転を受け開発されました。しかし高度40km以下の下層防衛なら、パトリオットPAC-3で十分なように思えるのですが、PAC-3の価格が高価過ぎるのと、北朝鮮が再突入速度を引き上げる研究を行っていたため、PAC-3では秒速2.5 kmの弾道ミサイルまで迎撃で、スカッドは迎撃可能ですが、ノドンは秒速3 kmで落下してくるため迎撃が不可能(迎撃チャンスが1秒しかない)。しかし「天弓」秒速5 kmまでのミサイルを迎撃できるのでノドンも十分に迎撃可能というのが、韓国国防部が「天弓」を開発した理由です。
しかしあれほど役に立たないと言っていたパトリオットPAC-3を来年度から導入する予定です。関連記事:
韓国軍 「迎撃可能時間が1秒しかない」とこき下ろしたパトリオットミサイルPAC-3の導入を決めるそして「韓国型ミサイル防衛システム(KAMD)」の中でも「キル・チェーン」という部分に相当するのが上記で書いた「先制攻撃」の部分です。2015年から米国の情報を頼りに運用を開始予定ですが、これを独自に運用するためには「解像度30cmの偵察衛星が5基」「早期警戒機があと4機」必要と言われており、これを2020年までに揃える計画になっています。
韓国側の本音:戦時統制権の返還の話自体を無くしてしまいたい。
問題なのは「キル・チェーン」を独自運用するために必要な機材の費用と、その効果の程度です。
米国のミサイル防衛は、ミサイルが発射された際の熱を捉えて、ミサイルが目標へ到達するまでの間に対処(迎撃)します。この場合、敵からの攻撃が明確になっているため「迎撃」に躊躇はありません。しかし「キル・チェーン」は発射前の段階で、ミサイルの発射の兆候を感知し、それが本当に韓国へ向けられた脅威なのかどうか評価しないといけません。そして評価に基づいて「先制攻撃」をする決定を下さないといけません。
これは一歩間違えると、戦争開始のボタンを韓国が自ら押すことになります。これを探知から30分以内判断し、ミサイルや航空機に発射(発進)を命じます。はたして有効に活用できるのか、かなり疑問が多い。
さらに独自運用のためには早期警戒機をあと4機(1機500億円ぐらいなので2000億円)と、偵察衛星が5基(1機数百億円ぐらい)が必要になるということは、ざっくり見ても4000億円程度は必要になる。4000億円と言えばウォン換算で約4兆ウォン。F35の導入費用7兆ウォンで天文学的な数字だと言っていたのに捻出できるんでしょうか?
韓国側の戦時統制権の延期よって「韓国型ミサイル防衛システム(KAMD)」を完成せる時間が稼げたと喜んでいますが、本音は盧武鉉前大統領の置き土産である「戦時統制権の返還問題」を当面封印、あるいは半島統一まで先送りしたいのが本音なんでしょう。
どう考えても、自主国防を叫ぶ割には、対北朝鮮戦での米軍支援は必須です。これを独自の力だけなんとかしようとは考えてもいません。要するに「戦時統制権の返還」は盧武鉉前大統領が民族の自尊心を焚きつけるために用いた政治的な道具にすぎず、それを
武鉉前大統領以降の政権が背負わされているだけに過ぎません。
ハッキリ言って無意味です。韓国側の本音:戦時統制権の返還の話自体を無くしてしまいたい。米国側の本音:戦時統制権の返還は正に打ち出の小槌
では米国側から見た「戦時統制権の返還」はどうなのでしょう?
ぶちゃっけ「米韓相互防衛条約」による防衛義務がある以上、なにも変わらない。ただ負担の比率から考えれば、米軍の負担は軽減されて、韓国側の負担が増えるだけ。米国としては早く「熨斗をつけてでも返したいところ」ではないでしょうか?
ただ米国は今回の「戦時統制権の返還」で、韓国側にグアム基地機能強化に必要な費用負担を飲ませたぽい。これからも戦時統制権の返還時期が来る度に、韓国に対しアレコレ要求して飲めば「再延期の合意」するという茶番を演じ続けるのでしょう。
米国側の本音:戦時統制権の返還は正に打ち出の小槌。一応触れおきますが・・・
大抵この話になると「在韓米軍撤退だー」と言う流れになるんですけど、
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・[読者寄稿記事]韓国の戦時作戦統制権移管と在韓米軍の撤退
・韓国の戦時作戦統制権と在韓米軍の撤退問題について補足以前に「戦時作戦統制権と在韓米軍の撤退問題」について書いたので、詳細は省き結論だけ書くと、現段階で例え「戦時統制権を返還」しても在韓米軍の撤退はありえないと管理人は考えます。これは様々な条約や約束が比較的守られやすい平時で仮定した場合です。所詮自分のケツに火が付けば条約や約束なんて紙くずですので、在韓米軍の駐留を保証するものはありません。
現状でも米国議会で莫大な財政赤字のため在韓米軍を減らしては? と言う声もありますが、全ては今後の国際情勢の変化次第だと思います。
ただ予想やウワサではなく、事実だけ積み上げれば現時点での在韓米軍の完全撤退は無いんじゃないかというのが管理人の考えです。