今流行のAIIBについて管理人的に考察しました。
そもそもアジアインフラ投資銀行ってなによ?
アジアインフラ投資銀行(AIIB)とは、中国が主導するアジアのインフラ整備に対する資金を融資する機関で、その内容に特別新しいものはありません。というのも同じような性格の国際機関として世界銀行(WB)やアジア開発銀行(ADB)などが既に存在しています。
なのに何故中国は新しくアジアインフラ投資銀行を立ち上げたのか? その辺を簡単にまとめてみます。
世界銀行やアジア開発銀行じゃだめなの?
アジア域内のインフラ整備事業は、まだまだ需要が伸びる市場であるにも関わらずプロジェクト自体はスムーズに回っていません。それは何故なのか? 後進国におけるインフラ整備は不正や横領などの温床になりやすく、世界銀行やアジア開発銀行が融資する際、かなり厳しい条件や要求を提示します。これは融資先の国で不正を防ぐためのではあるのですが、結果的に言えば融資のOKが取り付けにくい為、計画や構想があっても融資を引き出せない以上計画が進まないという問題を抱えています。
これは世界銀行やアジア開発銀行の運営体制にも関係してきます。銀行へ一定以上の額を出資している国は本部へ常任理事などという形で現地本部に「監査役」を置きます。そこで融資の計画をチェックしたり、それに対して意見を述べたりします。そこには政治的な思惑も絡んできます。一概に悪いとは言いませんが融資決定まで時間がかかりやすい体制だということです。
一方で中国が設立するアジアインフラ投資銀行は中国に本部を置くことが決まっています。そして世界銀行やアジア開発銀行とは違い、年に何回か開催される会議で大まかな事業計画の承認を受ければ、あとは本部の決済だけで事が運ぶ体制を撮っています。日米に限らずAIIB参加国からも「透明性の確保をどうするのか?」と言われているのはこの部分です。
融資条件が緩いAIIBはアジア諸国から大歓迎されている。
では何故透明性が必要なのか?
それはアジアインフラ投資銀行の融資を中国からの融資のように振る舞って貸し付けてしまえば、アジアインフラ投資銀行に借りたのではなく、中国に金を借りたと錯覚させることができ、中国の影響力を強化するために使われかねないとうことです。中国としては、自国の国家予算からではなくアジアインフラ投資銀行の財布を、あたかも中国の財布のように使えると言う話。
当の中国は「透明性」を確保し「公正」な融資を行なうと言ってはいますが、チェック体制が事実上無いため空手形に過ぎません。
しかしアジアの国々は中国主導のアジアインフラ投資銀行を歓迎しています。それは今までインフラ整備をしようにも世界銀行やアジア開発銀行の融資ハードルが高すぎて利用ができないのに比べ、アジアインフラ投資銀行の融資条件は相当ハードルが低いと見ています。要するに借りた金に利子を付けて返せば細かい事に口を出さない。
大手銀行で借りるのか、街金で借りるのかの違いに似ています。※単純に借りやすさのみの話。
融資条件が緩いAIIBは出資国からしても大歓迎されている。
結局のところ、金を貸して欲しい国とってアジアインフラ投資銀行は「融資条件の緩い銀行」と認知されているので自国のインフラ整備にとっては有利です。だから歓迎しているわけです。
では、上記で書いた「透明性」の問題や、使い方を誤れば「中国のODA化」の懸念があるアジアインフラ投資銀行に欧州を始めとする国々が雪崩を打って参加を表明しているのは何故か?と言う問題。
これは世界銀行やアジア開発銀行の厳しい融資基準のために、亀のような歩みでしか進まないアジアのインフラ整備事業がアジアインフラ投資銀行の誕生で一気に加速する可能性を秘めています。
アジアのインフラ整備事業の需要あるけど資金を融資するところがないか国際機関から融資の決定が下りない⇒日本企業は最悪、日本政府のODAを活用してインフラ整備事業をできるがそのような国は限られている⇒ そこで融資条件の緩そうなアジアインフラ投資銀行が出来たのでそこを利用してアジアのインフラ整備事業に進出できる⇒しかも融資割れした時のケツ持ちは中国及び出資国が負ってくれます。
こんな美味しい話はありません。きっと欧州各国はアジアインフラ投資銀行から金を借りさせたアジアのインフラ未整備国から、インフラ整備事業の名目で金を吸い上げることが出来ます。
そして欧州安保の考えた方NATOの行動範囲を考えればよく分かります。中国が大西洋や地中海に出てこない限り気にしないという方針というよりも、どうでもいいと思っているはずです。
引いてもダメ、押してもダメ、転んでもダメ、もう見守るしかない
ではAIIBに日本や米国は参加しなくていいのか? アジアのインフラ整備事業に遅れを取らないか? という問題です。
大規模なインフラ整備になれば融資と工事の権利はセットです。日本のODAを活用して工事をするなら日本企業が受注をするように、AIIBの融資をうけるには加盟国しか入札に参加できないでしょう。
日米がこれに対抗するならAIIB並に世界銀行やアジア開発銀行の融資条件を下げて対抗するしかないでしょう。ただし勢いを中国側にあります。もっと言えばアジア開発銀行とアジアインフラ投資銀行は丸かぶりで、将来的にアジア開発銀行が解散や吸収される形でのアジアインフラ投資銀行と合併してしまえば、世界にアジアの主導権を握っているのは中国だと印象づけてしまいます。
日米がAIIBに直接参加をして内部から中国の動きを牽制するのも手ですが、そうなればアジア開発銀行との違いがより不明確になり「では合併しよう」と言う話になりかねません。
かと言って参加もせずアジア開発銀行の改革もできなければ、アジアのインフラ事業の利権はすべてAIIB参加国で占められてしまいます。
数十年たった時AIIBの融資を受けた国に不正や蔓延るのもまた中国が付け入る隙になるようなもの。
引いてもダメ、押してもダメ、転んでもダメ、かなり巧妙な中国の戦略にオバマが対応出来なかったということでしょう。
もし早めにAIIBを潰すなら、いち早くアジア開発銀行の改革を行い融資基準や融資までのスピードを早め利用国の不満を取り除けばよかったんです。そうすればアジアインフラ投資銀行の設立の意味がなくなり、それでも無理矢理設立しようとすれば、中国は何がしたいの?と追い込めたはずなんですが、それはそれで難しいんでしょうね・・・
大手銀行の与信判断を街金並にさげて融資しようといってるようなものですから。
今のところは中国がポカをやらかさないか見守るしかないでしょうね。
「ザ・ボイスそこまで言うか」の青山繁晴さんはポッドキャストで聞けます。もしよかったら直近の聞いてみて下さい。
宮崎さん始め他の人も勿論面白い。
あとは日経の鈴置さんの「早読み 深読み 朝鮮半島」も
意見が違ってまた面白い。
お奨めです。