-山岳地形など韓国の環境に最適化された初の国産開発ヘリ
-目標地点まで自動飛行、夜間や悪天候でも任務を遂行可能
-毎分500 ftで垂直上昇、白頭山の高さでも飛行可能
-ヘリコプターの技術の中で最も困難な海上作戦ヘリコプター分野にも挑戦状
大蛇は想像の中の動物である。大蛇は千年間を水中で生きて、出会えば雷、稲妻と一緒に昇天して龍となる。韓国軍は「自主国防」の旗の下、1960年代から国産兵器の開発のために努力してきた。50年間に培ってきた技術力は、海外輸出に繋がり実を結んでいる。「龍になった大蛇」国産武器を紹介する。
「スリオン戦力化は、私たちの国防科学技術の優秀性を対内外に証明した快挙です」
パク・クネ大統領は、2013年5月スリオン戦力化イベントでこのように強調した。
国内の技術で作られたヘリコプターが、韓国軍に初めて導入された歴史的な瞬間だった。
全世界で11番目にヘリコプターを独自開発した国の隊列に上ったのだ。私たちの軍は、陸・海・空軍3軍が計690機のヘリコプターを運用している
世界の6大ヘリコプター国だ。しかしスリオンが戦力化されるまでは、すべて外国製製品であった。購入だけでなく運営維持も海外に依存する必要があるため、外貨流出の問題も大きかった。
特に私たちの軍隊の基本的なヘリコプターである「UH-1H」と「500MD」老朽化に伴う付属品のサポートの問題も明らかになった。このため私たちの軍は、2001年に韓国軍の要求性能に応じた韓国型ヘリコプターの開発を決定した。
スリオンヘリコプターを利用して、陸軍将兵が降下訓練をしている
◇ KT-1・T-50のノウハウで早期開発に成功スリオンという名前は、ワシから取ってきた。空の帝王と称するワシの勇猛さと迅速な機動性を意味する「スリ」に数字の100の韓国語である「オン」を結合した。
100%の国産化と完璧さを追求したという意味だ。当初「韓国型多目的ヘリコプター(KMH)」プロジェクトで開始されたスリオン開発は、2004年に事業の妥当性の検討で機動型を優先開発し、その後に攻撃型を追加開発することを決定した。これにより空中強襲作戦と指揮・統制などの任務を遂行するヘリコプターの開発が2006年から始まった。
総事業費1兆3000億ウォン(国防総省8300億ウォン・産業通商資源部4695億ウォン)規模のプロジェクトであった。
この事業は、主事業者である韓国航空宇宙産業のほか、ハンファ、サムスンテックウィン(現ハンファテックウィン)、LIGネクスウォンなど98社がパートナーとして参加した。海外パートナーもユーロコプターなど49社が参加しており、18の大学と10の研究所が参加した大規模プロジェクトであった。
通常ヘリ開発には10年以上の期間が必要とされる。しかしスリオンの開発は、運用者である陸軍の要求に応じて、6年という短い期間内に完了する必要があった。KAI関係者は「国産訓練機KT -1とT-50の開発経験をもとに、設計と製造をコンピュータシステムで同時進行されるコンカレントエンジニアリング設計を適用して設計のエラーと開発期間を大幅に短縮することができた」と説明した。
スリオン(左)は、従来のアナログ計器はなく、統合デジタル計器パネルを使用
右は、スリオンと同等のヘリコプターと評価されるUH-60Pのコックピット様子◇マイナス40度の極寒の環境でも「すべてクリア」1年で基本設計を終えてヘリコプターの外形を確定した開発陣は、詳細設計と同時に2007年11月部品加工をはじめ、事業着手から3年2カ月後の2009年1月に試作1号機を出荷した。
試作機の製作は完了したが、その後には過酷な試験評価が待っていた。すでに戦力化されいる外国製のヘリコプターよりも性能が優れていなければならないというのが軍当局の要求である。
実際に米国のアラスカで低温飛行運用能力を試験した。国産航空機を海外で試験・検証したのは、スリオンが始めてで、非常に異例のことであった。
スリオンは当初、低温性能確認のために、国防科学研究所(ADD)の環境試験場で低温試験を行った。氷点下32度、マイナス40度の条件でエンジン始動と各系統が正常に動作するかどうかを確認して、零下45度でも信頼性試験を行った。3回の低温試験を通じて氷点下の温度で発生する可能性のあるすべての異常を識別して改善した。
しかし実験室での低温運用能力だけでは不足しているし、軍当局と開発陣は実際の環境でもテストを続行することにした。韓国で最も寒いとされる江原道楊口で行われた実験であったが、気温が氷点下23度以下には落ちなかった。軍当局は実験室のようにスリオンが、実際のマイナス30度以下でも異常なく稼働することを確認したかった。
そのため米国アラスカ州フェアバンクスで低温飛行試験をすることにした。氷点下32度以下の実際の環境で12時間以上露出させた後も、スリオンは異常なく動いた。最低零下40度まで下がる極端な状況で、50回以上の試験を行った。121の試験項目を通じて低温飛行能力を検証したスリオンは運用領域を零下32度まで拡張することができた。
スリオンは特に過酷な耐久性試験も経験した。ヘリコプターの核心部品であるエンジンとトランスミッション(変速機)、ローター(ヘリ回転部)などは、一定レベルの耐久性があってこそ安定した作戦遂行が可能である。スリオンを地面に固定し220時間稼働させて実施した試験で耐久性を検証した。
米国アラスカでスリオンの低温飛行試験を進めている様子◇パイロットがいなくても目的地まで自動飛行スリオンの最大の利点は、自動飛行機能である。目標地点をあらかじめ決めておけば離陸後、目的地域まで別途の操作なしに自動で飛行する。夜間や悪天候の気象条件の下でも作戦が可能であるという意味だ。
自動的に飛行位置を保持する能力も保有しており、高難度の高精度貨物空輸作戦も同種のヘリコプターであるUH -60などに比べて優れていると評価される。独自に開発した4軸(上・下・左・右)自動飛行操縦装置とデジタル制御装置のおかげである。
スリオンは、プロペラを除くヘリ本体は、長さ15m、高さ4.5m、幅2mの大きさだ。パイロット2人と機関銃の射手2人、完全武装兵力9人、あるいはパイロット2人と2289Kgの荷物を収納することができる。スリオンの最大離陸重量は8.7トンである。
最大巡航速度140ノット(259Km/h)で、巡航飛行高度は9002フィートにもなる。白頭山の高さ(2744m)でも通常飛行が可能であることを意味する。韓国の山岳地形を考慮して毎分500フィートの速度で垂直上昇できるように設計された。
プロペラなどのローター系統とコックピット、エンジン、燃料タンクなどは銃弾を当たっても貫通したり、発火せず耐えることができる耐弾能力を持っている。これは攻撃されてもヘリコプターの安全帰還を保証する機能である。
敵の脅威を事前に知らせる自動警報機能を備えており、主要なヘリコプター品目の運用を示す状態監視装置(HUMS)を搭載して欠陥とライフサイクルに関するリアルタイムの情報で安定性を高めた。
海兵隊の上陸機動ヘリ用に開発されたスリオンが海上を飛行している◇「ヘリコプターの最高峰」海上作戦ヘリに挑戦状現在スリオンは、私たちの軍で戦力化されて人員の輸送と監視および偵察任務を遂行している。特に軍内の救急患者の迅速な搬送を担当するために、昨年創設された義務搬送航空隊で重要な役割を果たしている。
この部隊ではスリオンを通じた迅速な搬送で、過去1年間に78件83人の命を救った。
スリオンヘリコプターを改造した義務搬送専用のヘリコプターは現在開発を完了して、2018年に導入する予定である。またスリオンベースの海兵隊用の上陸機動ヘリも開発が完了し生産を控えている。
上陸機動ヘリは戦術航法システム、長距離通信用無線機などを搭載しており、海に緊急着陸時に転覆せず、一定時間の水面に浮いていられるようにする緊急浮揚装置まで備えている。さらに補助燃料タンクも追加し航続距離を伸ばした。
昨年の試験で浦項〜独島を往復するために必要な3時間以上の計524kmを飛行しことがある。また艦艇に搭載可能なように回転部の折り畳み装置を改善し、海水による機体腐食を防止するための防塩処理をするなど、海上環境で作戦を実行できるように改造した。
スリオンは海上作戦ヘリでも変身する予定ある。海上作戦ヘリは敵艦艇と潜水艦を探知して搭載された対艦・対潜兵器を利用して攻撃まで実行する特殊なヘリコプターだ。ヘリコプターの最高峰と呼ばれる領域である。
現在、韓国軍は次期護衛艦に搭載する海上作戦ヘリの導入事業 を進めている。1次事業で「ワイルドキャット」というニックネームで有名なAW -159が選ばれた。今年8機を導入する予定である。12機の戦力化を予定している2次事業は2019年から2025年まで進行されKAIは、この事業にスリオンベースの海上作戦ヘリコプターを開発し挑戦するという計画である。