韓国のKF-16性能改良事業の顛末について、よく分からないと言う声があったので、もっとシンプルにまとめ直しました。
FMS方式でやると言われたのに無視した韓国
そもそもKF-16性能改良事業とは、レーダーや火器管制装置をアップグレードすることが主な目的です。特にレーダーを流行りの「AESAレーダー」に載せ替えることが最大の目的。小ネタですが、載せ替えるためのAESAレーダーを購入する際、KFX用のAESAレーダー開発のため、技術移転をしてくれるよう条件をだしていました。
韓国は134機のKF-16性能改良を米国に依頼し、米国はFMS方式(企業ではなく、米国政府と購入国が契約方式、日本では有償援助調達と呼ばれています。)で行うことを通達します。
米国が「FMSで」と言えば、事実上これを拒否することは困難です。もし無視して企業と直接取引をしても、必ず武器輸出規制に引っかかり米国議会で承認を受ける必要があるので、FMSを拒否すれば議会承認で必ず拒否されるというシステム(恐ろしい・・・)
FMS方式で改良事業を行うには、韓国政府が米国政府(正確に担当の軍当局)に要求を伝えて、米国が勧める企業と相談し金額を出した後、その金額にFMSの手数料を載せます。これは万が一問題があったとき、その責任を米国政府が負うので、一種の保険代とも言えます。さらにこの手数料には、米国政府の予算で開発した兵器販売の際、いくらか開発費を購入国に負担してもらい回収するという意味もあります。
要するにFMS方式だと言われれば、契約に関する交渉相手は米国政府のみということになります。
しかし韓国はFMSのルールを破って、直接、複数の企業と接触しKF-16性能改良事業の入札を行って、事業に掛かる費用を少しでも安くしようと画策します。(直接企業と取引することで技術移転も受けたいという意図も・・・)
米国は「FMS方式と商業方式を同時に進めてはならない」と韓国に通達し、さらに「商業方式で確定した金額はFMSには反映されない」と韓国側の意図に釘をさしました。
しかし韓国側はこれを無視して入札を強行してしまいます。 米国「1兆7500億ウォンには縛られない」
強行入札の結果、BAE社とロッキード社参加し、BAE社が落札しました。
BAE社は韓国の希望額に合わせた金額を提示し、ロッキード社は端から韓国の希望額では無理といって、大幅に希望額を超える額で入札に応じたらしい。 管理人補足:
BAE社は英国企業なので、基本的に米国政府が主導するFMS方式には参加できません。しかしBAE社は米国の防衛産業企業を買収し、現地子会社を通じてFMS方式による性能改良事業の初受注を目指していたので、相当無理をした金額だったのかもしれません。
入札によってBAE社と交わした契約の金額は1兆7500億ウォンで、この数字をもって米国政府とFMS交渉を始めました。韓国側とすれば米国の言いなりになって交渉すればふっかけられるので、先に自分達で事業請負企業を見つけ、金額を提示すれば、米国も無茶な金額を言ってこれないだろうと考えたのでしょうか?
韓国は既成事実を作るため、FMS交渉がまた纏まってもいないのに、勝手にBAE社にテスト改良としてKF-16を2機米国へ派遣し、改修作業を行い始めます。その代金として約1000億ウォンを直接、BAE社に支給してしまいます。
米国は韓国がBAE社に発注したいと希望したため、BAE社と協議しFMS方式で行う場合の見積もりを出させます。BAE社はFMSで行う場合、追加費用が掛かるとし、米国政府はFMS方式の手数料を載せて2兆3400億ウォン(20億ドル)が必要だと韓国政府に通知します。
そのため、何も事情を知らないマスコミと国民は、1兆7500億ウォンと言っていたのに、後から値を釣り上げたと叫び始めます。 韓国の勝手な理屈は通用しなかった
その後、米国はBAE社は経験不足なので、ロッキード社へ発注先を変えるよう韓国に要請します。事情を知らない国民やマスコミが、BAE社が契約金額を守らず追加で金を要求したと批判しているので、渡りに船とばかりにBAE社が契約を守らないことを理由に契約を一方的に破棄してしまいます。 管理人補足:
BAE社は、韓国が不当に契約を破棄したとしてテスト改修に派遣したKF-16を返還せず、受け取った1000億ウォンも返さないまま、訴訟を起こしています。
防衛事業庁が無理なKF-16事業推進で1000億ウォンを無駄にしたというのはこの部分です。
しかし軍は、ここでも国民からの批判をかわすために、1兆9890億ウォン(17億ドル)で米国政府と合意したかのように国会に報告します。その後、ロッキード社に変更し、再度見積もりをとりなおして出てきた数字が2兆8080億ウォン(24億ドル)、米国の報道では3兆2000億ウォン(約27億ドル)
恐らくロッキード社の見積もりが24億ドルで、FMSの手数料を含めた金額が27億ドルだと思います。
結論:韓国が勝手に動いてBAE社と契約したけど、米国に怒られて破棄させられた
韓国の勝手な理屈は通用しなかったというオチですね(笑)
横っ腹をけっとばして痛みで理解させるしかない